遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)
と診断されたら?

HBOC診断後の臨床での対応に関する情報

BRCA1/2遺伝子検査の結果が陽性の場合、HBOCと診断されます。すでにがんを発症している場合は、乳房の切除、卵管・卵巣の摘出といった手術療法や薬物療法などが行われます。また、発症していない場合には、将来のがんの発症を予防するために、希望によってリスク低減手術などを受けられます。

HBOC は、乳がん・卵巣がん発症のリスクが高まるほか、膵臓がん、前立腺がんの発症リスクが高まることも報告されています。

BRCA1/2遺伝子検査の結果

HBOCを診断するために、BRCA1/2遺伝子検査を受けた場合の結果は、大きく3つのパターンで示されます。
BRCA1/2遺伝子に、がんとの関連が強い変化(病的バリアント)が認められた場合は「陽性」と判定され、HBOCと診断されます。変化が認められなかった場合は「陰性」と判定されます。
遺伝子の変化(バリアント)が見つかっても、がんの発症と関連するかどうか判断できない場合は「不明(VUS)」と判定されます。

BRCA1/2遺伝子検査の結果のパターン

HBOCの場合のがん治療

HBOCと診断された場合、すでに発症している乳がん・卵巣がんについては、乳房の切除、卵管・卵巣の摘出といった手術療法や薬物療法などが行われます。
手術の術式や薬剤選択などの治療方針を考えるうえで、BRCA1/2遺伝子検査の情報が参考になる場合があります。乳房温存療法が積極的に勧められていない、卵巣がんで特定の分子標的薬が効きやすいなどの特徴がありますが、必要な治療は一人ひとりの状況によって変わります。ご自身の価値観とも照らし合わせながら、担当医とよく相談して決めることが大切です。

  • 発症している病気に対する手術療法
  • 発症している病気に対する薬物療法

乳がん・卵巣がんの予防・検査

がんを発症していない部位への対応には、リスク低減手術とサーベイランスがあります。
リスク低減手術は、乳がんや卵巣がんのリスクを下げるために、がんを発症する前に乳房を切除、あるいは卵管・卵巣を摘出することです。乳房の切除後は、希望に応じて失われた乳房を再建する手術が行われます。卵巣がんでは、卵管・卵巣の摘出により死亡リスクを下げることができると報告されています。また、卵巣がんは早期発見が難しいため、リスク低減手術の積極的な検討が望まれます。結婚や妊娠、出産などのライフイベントについてどのように考えているかも含め、担当医と相談するとよいでしょう。
サーベイランスは、がんを早期発見するための定期的かつ精密な検査です。乳がんでは、乳房造影MRI検査が優れた検出力を持つことが報告されています。一方、卵巣がんでは、サーベイランスの効果が十分ではなく、リスク低減手術を選択しなかった場合に限り実施が検討されます。

未発症の乳房・卵巣に対する病気の予防・検査

リスク低減手術の保険適用条件と費用

2020年4月から、HBOCと診断され、すでに乳がんあるいは卵巣がんを発症している方に対するリスク低減手術が保険適用になりました。費用は手術の種類や術式によって異なりますが、乳房切除の場合は15~18万円(1~3割負担の場合)、卵管・卵巣摘出の場合は18~24万円(1~3割負担の場合)が目安で、別途入院費、検査費がかかります。いずれも高額療養費制度の対象となります。

手術後の生活

手術が終わって退院するころには、たいてい家事や入浴などができるようになっていますが、無理をしないことが大切です。

  • 家事は家族の協力も必要
  • 入浴などの日常生活も可能に
  • 診療を受けながら軽い運動から開始

リスク低減乳房切除術(RRM)の場合:腕や肩を動かしにくい場合や乳房の状態が安定するまでは避けたほうがよい動きがあります。

リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)の場合:腹部の切開が小さい腹腔鏡手術が推奨されていますが、手術後はおなかが張る(膨満感)、便秘などが起こることがあります。自然閉経の前に両側の卵巣を摘出すると、「卵巣欠落症状」と呼ばれる更年期に似た症状が出ることもあります。

TOP