遺伝性
乳がん卵巣がん(HBOC)
関するイベント情報

HBOC診断後の臨床での対応に関する情報

ピンクリボン オンラインイベント開催レポート

ピンクリボン オンラインイベント「もっと 知って 乳がんのこと」

2023年10月1日。ピンクリボン月間の初日に、日本で増えている乳がんの早期発見、早期治療のきっかけとなることを願って、ピンクリボン オンラインイベント「もっと 知って 乳がんのこと」が開催されました。元SKE48 矢方美紀さん、陶芸家 岡崎裕子さんによるセミナー、パラレルシンガー 七海うららさんによるスペシャル トーク&コンサート、そして、聖路加国際病院 乳腺外科 副医長 竹井淳子先生を交えたトークセッションを、フリーアナウンサー 森本智子さんの司会で実施。ご登壇者の乳がん体験談を交えてお話しいただきました。

イベントにご出演されたみなさん。左から、フリーアナウンサー 森本智子さん、聖路加国際病院 乳腺外科 副医長 竹井淳子先生、元SKE48 矢方美紀さん、陶芸家 岡崎裕子さん、パラレルシンガー 七海うららさん。

Seminar 1
乳がんになっても前を向いて
元SKE48 矢方 美紀さん

最初にご登壇された矢方さんが乳がんと診断されたのは、2018年、25歳の時。そのきっかけとなったのは───

「ある芸能人の方が若くして乳がんで亡くなったというニュースをリアルタイムで見たんです。そして、セルフチェックの存在を知り、自らやってみると、すごく硬いしこりが左の胸にあったんです。生理の時期で張っているだけかと思ったんですが、生理が落ち着いてからチェックしても大きさや位置が変わらなかったので変だなと思い、 2017年12月の下旬に乳腺外科に行きました。そこで、生検(生体検査)、エコー(超音波検査)、マンモグラフィーに続いて細胞診(細胞診検査)も行い、2018年1月中旬に乳がんステージ1と診断されました。2018年2月にはリンパ節への転移も見つかり、ステージ2bと告知を受けました」

その後、手術方法、治療法、卵子凍結、遺伝子検査など多くの選択を一気に考えることに直面。悩み、ご家族にもたくさん相談したそうです。

「最初は全摘にすごく抵抗があって、手術をしない選択もあるかもしれないと悩んでいたんですが、将来のことを考えて決めてくださいね、という先生の一言に背中を押してもらい、手術を受ける決断をしました。2018年4月に手術、1週間入院して退院しました。抗がん剤による脱毛でウィッグを使っていた時期もありましたが、そんな時でもメイクやおしゃれを楽しむことが自分への活力になりました」

乳がん発見から5年。最初は戸惑いもありましたが、自分の体を受け入れ、しっかり向き合ってきたことで、毎日をエンジョイできるように。

「実際に手術を終えて、ステージ3aとわかった時は、もっと早い段階で見つけることができたかもしれないという後悔が少しありました。自分の体は自分にしか守れないですし、私は大丈夫という言葉はない。そのことを、みなさんにお伝えしたいと思います。
いまは、人生は1回しかない、をモットーに、いろいろなことをやってみようという気持ちしかありません。ネガティブな病気を経験してプラスに変えられたことがたくさんあったので、この経験を受け止めて毎日をエンジョイしています」

Seminar 2
遺伝性乳がんと未来を生きる
陶芸家 岡崎 裕子さん

二児の母でもある岡崎さんが乳がんに罹患したのは、陶芸家としてのお仕事と子育てに忙しかった2017年。出産や授乳と重なり、3年間マンモグラフィーを受けていない時期でした。

「入浴中、手に左胸のしこりがあたったことが気になりました。母乳がつまってるのかなと思ったんですが、それまでつまった時は、熱を持ったり赤く腫れたり。それもなかったので近くのクリニックを受診、乳がんと診断されました。抗がん剤治療を実施後、左乳房を全切除しました。病理検査で完全奏効が認められて、いまは無治療で経過観察中です。ただ、がんとわかった時は、育児どうしよう、という想いでいっぱいで。すぐに子どもたちの保育園や幼稚園の先生、ご近所の親しい一家族に連絡して、サポートをお願いしました。子どもたちが不安にならないように、最初にきちんと説明し、夫も含め家族で治療と向き合いました」

治療中、乳がんについてたくさん勉強した岡崎さん。主治医から勧められた遺伝子検査も迷わず受け、遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)であることがわかりました。

「遺伝子検査を受けることは、治療方針にも関わっていたので迷いはありませんでした。陽性とわかっていろいろな想いが去来しましたが、わかったことで将来をみすえた対策が取れたことはよかったと思っています。がんになっていない近親者もいるので、遺伝性であっても必ずしもがんにかかるわけではない、と私自身が思えていることも受け入れるうえで大きな要素でした」

ご家族とともに治療を乗り越えてより仲が深まり、まわりの人との絆も深まったと感じている岡崎さん。最後に、視聴されている方へメッセージを送りました。

「乳がんになって、人の命は有限であると実感しました。私が経験したようなことが、みなさんの身にはできれば起きないでほしいと思いますので、自分の体に日頃から目を向けていただければと思います。何かおかしいと感じても、きっと大丈夫と思ってしまいがちですが、専門医に大丈夫と言っていただくところまで体を大事に見守ってください」

Special Talk & Concert
〜Pink Ribbon Version〜
パラレルシンガー 七海 うららさん

リアルとバーチャルを行き来するパラレルシンガー 七海うららさんのスペシャル トーク&コンサートでは、今回のイベントのために用意していただいたオリジナル映像を配信。乳がんが見つかったきっかけや闘病経験から得た心境の変化などをお話しいただきました。

「私が乳がんに気づいたきっかけはインナーに血がついていたという些細なことで、最初は皮膚が荒れているのかと思いました。ところが皮膚科で治療を受けても治らなかったので、乳腺外科で診てもらうことに。検査の結果、非浸潤性の乳がんで転移はしていないけれどたくさんある状態と説明され、乳房を全切除し、乳房再建もしました。現在は経過観察で、定期検診を受けながら再発がないかチェックしています」

当時、会社員だった七海さんは、コロナ禍でこれからの人生について考える時間を持てたことで、音楽活動を始める決心をしたそうです。

「自分の残りの人生を自分が好きなことに全力で取り組めたら、きっと悔いなく生きていけるなと思い、音楽活動を始めました。自分の経験を個性として歌に込め、いまの私を見ていただくことでプラスの影響を与え続けられることを願い日々活動しています」

経過観察を続けていた2023年。主治医の先生に勧められて遺伝子検査を受け、陽性に。

「その時は、あ、ですよね、という気持ちでした。遺伝子検査は、治療や別のがんの予防など、この先の人生さまざまな選択肢があるなかで、自分がどうしていくかを事前に考えられるようになったので受けて良かったと思っています」

さまざまな経験をした七海さんは、楽曲を通して、キラキラ輝くご自身の姿や前向きな強い想いを発信したいと願っています。

「私はがんが恥ずかしいことだと思わないですし、治療をして乗り越えて前向きに生きています。いまではさまざまな治療の選択肢があり、早期発見で助かる命があります。がんが見つかった場合でも、がんイコール死というイメージではなくなってきていて、そこから第二の人生を歩むことができるので、過度に恐れずに乗り越えていきましょう」

Talk Session

トークセッションでは、日頃から乳がんを意識することやセルフチェックの大切さについて、それぞれの体験や想いを交えながらお話しいただきました。

乳がんがわかったきっかけと
その時の気持ち

森本さん「みなさんが乳がんを見つけたきっかけ、あるいはわかった時にどのような想いを抱いたか、改めてお伺いできますか」

矢方さん「私の場合はテレビの報道で乳がんで亡くなる方を見て、自分でセルフチェックを行ったのがきっかけです。先生から直接、乳がんですよ、と言われた時は、まだ25歳なのにという驚きがとても大きかったです」

岡崎さん「私はのんびり入浴中に胸に手が触れたことがきっかけでした。がんとわかった時は、やはり育児の心配が大きかったのですが、主治医の先生に不安を相談したら、仕事も育児も両立できますよ、とにこやかに答えてくださったので私の中で光が見えてきました」

七海さん「私はシャツに分泌物が付着していたことがきっかけで。がんについてぼやっとしたイメージしかなかった頃はマイナス思考になっていましたが、どのような病気か明確になるほど、前向きに良くなった後のことを考えられるようになりました」

森本さん「竹井先生、みなさんのように日頃から自分の体を意識することが大切だと思いますが、具体的にどのようなことをしたら良いでしょうか」

竹井先生「実際、がんになられた方の半数以上はご自身の症状から乳がんが見つかっています。ブレスト・アウェアネスと言われる、ご自身の乳房を意識する生活習慣を身につけていただくことが大切です。
セルフチェック、乳房の変化に気をつける、変化に気づいたらすぐに医師に相談する、そして40歳を過ぎたら2年に1度は乳がん検診を受けることです。セルフチェックのタイミングは、生理で胸が張ったりするとわかりにくくなりますので、生理が落ち着いた時に月に1回見ていただくのが良いと思います」

治療中に困ったこと
治療中の支えになったこと

森本さん「みなさんが治療中に困ったことや支えになったことを伺っていきたいと思います」

矢方さん「私の場合、抗がん剤は14回受けました。事前にウィッグを用意していましたが、あとから医療用ウィッグの方がなじみ良いことがわかったり、副作用でむくみがでたり、戸惑うことも多くありました。初めは公表せずに仕事を続けようと思ったんですが、思い切って自分の体のことを公表したら理解をしてくださる方が多くて、支えていただきました」

岡崎さん「脱毛で眉毛も抜けてしまうことがあったので、眉ティントを使ってちょっと楽しんだりしていました。私の場合は子どもの存在が本当に大きく、病人であることを意識する時間をすごく短くさせてくれました。子どもたちを不安にさせないように自分を奮い立たせることで、結果的に前向きに治療に臨むことができたと思っています」

七海さん「私は全摘後、一次再建手術で入院していた時がつらかったです。鎮痛剤も効かず、涙が止まらないくらい痛くて。あの日々を乗り越えた自分を偉いって思うぐらい忘れられない記憶として残っています」

遺伝性乳がん
遺伝子検査について

森本さん「みなさんは遺伝子検査も受けられているそうですが、竹井先生、遺伝性乳がんとはどのようなものですか」

竹井先生「がんのなかには、遺伝性のものもあります。それはみなさんが生まれた時から設計図として持っている遺伝子のなかにがんを発症しやすい変化を持っているかどうかということになります。乳がんでは全体の4~5%の方がこの変化を持っており、比較的若齢で乳がんになりやすいことが特徴です。そのほかにも、ご家族や近親者に乳がんや卵巣がんの方がいらっしゃったら遺伝性のことも考慮するように言われています。珍しいかもしれませんが、男性で乳がんになる方もいらっしゃいます」

森本さん「みなさんは遺伝子検査を受ける際に迷われましたか」

矢方さん「私は発症年齢が25歳ということもあり、遺伝の可能性も含めて先生から説明を受けました。親とも相談し、検査の結果次第で将来の対策や備えができると考えて受ける決断をしました」

岡崎さん「私の場合は、抗がん剤治療2回目の時に家族歴も含めて遺伝性の検査を受けることを勧められました。治療方針にも影響すると聞き、自分に合った良い治療を選択するために検査を受けることを決めました」

七海さん「私は再建手術が終わったあとに先生に勧められました。その時は保険も適用されていて、受けやすい金額になっていたため、実際に受けてみようと決めました」

遺伝性乳がん卵巣がんについて

森本さん「先生、この遺伝性乳がん卵巣がんについて、視聴者の方にお伝えしたいことがあるそうですね」

竹井先生「遺伝性乳がん卵巣がんの遺伝子の変化というのを持っていた場合、50%の確率で親から引き継いでいる、または自分が持っていたら子に引き継ぐということがあります。ただし、実際に生涯のうちで乳がんを発症するのは100%ではなくて、変化を持っていてもがんにならないこともあります。がんを早期発見するためにはやはり定期的な検診が必要です。先ほどお伝えしたように、若齢で乳がんや卵巣がんを発症した、またはご家族にもいるなど気になることがありましたら、遺伝カウンセリングを受けてみると良いと思います」

岡崎さん「最初の治療前や予防切除前などのカウンセリングでは、先生が人生の伴走者になってくださっていることを感じられて、とてもありがたかったですし、いまもありがたいと思っています」

森本さん「遺伝子検査は2020年4月から、一定条件を満たす患者さんは遺伝性乳がん卵巣がんの診断からリスク低減手術などの治療、そして遺伝カウンセリングに至るまで保険適用となっています」

竹井先生「保険適用になる前に乳がん、卵巣がんと診断され、その時しか遺伝子検査のお話をされていないこともあります。ご自身の体の設計図、情報は一生変わりませんから、遺伝子検査を受けていない方でも、気になった時にはいつでも振り返って、カウンセリングを受けていただきたいと思います」

森本さん「そして、やはり大切なのは定期検診を受けることだと思います。矢方さんも定期検診を続けられているそうですね」

矢方さん「はい。いまは1年に1度検査を行っています。今年も、とくに異常なかったですよ、と言われて。安心材料になりますが、来年も大丈夫という保証はないので、やはり毎年検診を受けるのはすごく大事だなと毎年感じています」

みなさんへのメッセージ

森本さん「最後にみなさんから視聴者の方へメッセージをお願いします」

竹井先生「今日、3人の方がお話されて本当に告知を受けた時のショックはいかばかりかと思います。そこから今日のようにご自身の言葉で発信している姿を見て、本当に人って強いなと私の方が力をもらいました。見てくださっている中にも迷っている方がいると思いますが、いろいろなサポートがありますので、ぜひ遺伝カウンセリングなどをご利用いただいて一緒に頑張っていけたらなと思います。また未発症の方、まずはご自身の胸に興味を持つことが一番大事ですので毎月の自己触診など頑張ってみてください」

矢方さん「私は、ほかの人からの発信がきっかけで自分の病気を見つけることができました。今日の配信をご視聴のみなさんに、ぜひ他人事ではないと受け止めていただいて、話を聞いて良かったと1年後もずっと忘れられることのない時間になるといいなと思います」

岡崎さん「私自身の闘病と経験をお話しすることしかできませんが、少しでもみなさんのお役に立てたらと思い、これからも健康に留意して頑張ります」

七海さん「私は会社員の頃に罹患してそこから治療して、本当に自分がやりたいことを見つけて歌のお仕事をして、みなさんにこのような形で発信できています。第二の人生を歩んでいる私の姿が、一人でも多くの方の背中を押すきっかけになればいいなと思って活動しています。みなさんも他人事だと思わずにセルフチェックや検査を受けていただきたいです」

森本さん「ありがとうございます。このイベントを通して多くの方に乳がんの早期発見、早期治療の大切さが伝わったのではないかなと思っております。そして、1人でも多くの方がセルフチェックを行ったり、病院に定期健診に行ったりするきっかけになれたらいいなと願っております。ご登壇いただいた皆様、ご視聴いただいた皆様、最後まで見ていただいて、誠にありがとうございました」

Talk Session

「トークセッション」の模様はこちら

※動画内、BRCA1/2遺伝子検査の保険適用条件は2023年10月時点のものです。詳しくは、こちら
ご覧ください。

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