遺伝性
乳がん卵巣がん(HBOC)に
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「クリトモ式クッキング&トークショー」開催レポート

「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)」のことをより多くの人に知ってもらい、早期発見につながることを願って。 2024年11月4日、ご自身もHBOCである料理家の栗原 友さんを招いて、料理教室ABCクッキングスタジオで「クリトモ式クッキング&トークショー」を開催しました。
第1部 オリジナルレシピ料理実演

第1部では、魚愛あふれる栗原さんならではのオリジナルレシピを、美味しく作るコツやお好みの食材の話などを交えながらご紹介いただきました。
当日のメニューは「タコのラグーソースパスタ」と「刺身パックを使ったブルスケッタ」。会場で試食した方たちから「おいしい!」の声があがっていました。
第2部 乳がん体験を語るトークショー

料理実演の後は、ご自身の乳がん体験を語るトークショーを実施。乳がんがわかった当時のことやご家族への伝え方、仕事に対する気持ちの変化、そしてHBOCや遺伝子検査などについて貴重なお話を伺いました。会場では、栗原さんのお話に耳を傾け、深くうなずく方も多くいました。
ここでその模様をレポートします。
乳がんやHBOCがわかった当時のこと
栗原さんは2019年に左胸の乳がんがわかりましたが、どういった経緯で気づかれたんですか。
栗原さん「娘とグアムに行ったとき、水着を着てオイルを塗っていたんです。久しぶりに自分の体を触ったんですけど、胸に大きなしこりを感じて。ああ、これは来たかもしれない、と。それがきっかけでしたね。
そして、ゴールデンウィーク明けに検査を受けたんです。結果が出るまで時間があったので、乳がん経験者の先輩に相談したら、8割そうだと思っていたほうがいい、というアドバイスをもらって。もしそうじゃなかったらラッキーだけど、そうだったときのために、いろいろ備えておこうと思いました」
先生からはどのようなお話がありましたか。
栗原さん「最初の先生からはがんの告知をされた後、治療どうする、と聞かれたんですけど……。
ここで、みなさんに強くお伝えしたいことがあって。それは、お医者さんは自分で選べる、ということなんです。私は先輩に教えてもらった乳がん専門のクリニックに変えて、すでにがんと告知されているけど、どうしたらいいか、と相談したんです。そうしたら、いろいろな治療方法があることを教えてくださいました。そして、ここはクリニックだからと転院先も用意してくださって。この先生だったら心から信頼できるなと思って、大きな病院に転院する判断をしたんです」
HBOC、遺伝子検査について
そんな先生たちに出会えたからこそ、遺伝子検査を受けることになったんですね。
栗原さん「私はステージ2で、悪性度の高いトリプルネガティブ乳がんだったんで、なるべく早く手術したほうがいいと言われていました。年齢のこともあるし、進行がゆっくりなタイプではなかったので、毎週、検査、検査、検査だったんです。その一環で、今日はちょっと紹介したい先生がいると言われて。それが、遺伝子専門の先生だったんです。当時、父もがんでしたし、そして年齢のこともあって。そうしたいろんなことを総合的に考えたら、遺伝子検査を受けたほうがいいかもしれない。もしHBOCだった場合、いろんな治療方法が見つかってより明確な治療ができるからどうですか、と勧められました。
検査は5分で終わりました。遺伝子と聞くとすごく大変なことに思いますけど、ただの血液検査なんです」
HBOCの遺伝子検査が保険適用となったのは2020年で、栗原さんが検査を受けたときはまだ保険適用ではなかったんですね。
栗原さん「遺伝子検査というものがあることも知らなかったし、金額が高くて、わっと驚きました。だけど、自分の将来のことを考えたら治療方法が明確になるし、もしかしたら自分の子どもへの遺伝もあるかもしれない。いろんなことに備えることができるなと思ったら、やらないという選択肢はなかったです」
※HBOCの遺伝子検査が保険適用となる場合の費用は約2~6万円(1~3割負担の場合。別途診察料、手技料が必要。)2024年11月現在
娘さんやご家族への対応

乳がんとわかったとき、娘さんへはどう伝えましたか。
栗原さん「先生や看護師さんたちから、もし娘さんにどう伝えるかで悩んでいたら、相談に乗ってくれる遺伝カウンセラーがいるから会ってみませんか、と言われて。遺伝カウンセリングはハードルが高いイメージだったんですけど、何でも相談できると言われて会ってみようかなと思いました。そして、娘には伝えないという選択肢もあるんですけど、遺伝カウンセラーの方と会って伝えることに。当時、うちの子は4歳で、いろんなことを理解させるのは難しかったので、ひとつ『悪者』を作って、その悪者とこれから戦うから頑張るね、という言い方をすればそんなに驚かせなくていいんじゃないか、と思いました。『がん』という言葉の響きは怖いから使わずに、胸に悪者がいて戦わなきゃいけないから、ちょっと離ればなれになっちゃうんだけど、と話していました」
血縁者のみなさんには、どのようにお伝えしたんですか。
栗原さん「父はがんで闘病中だったんで、HBOCのことは黙っていました。でも、父には何でも話していたから、お父さん、私もがんになっちゃった~、と明るく言って。そうしたら、そんな感じだったらそんなに重くないんだろ、手術ですぐ取れるくらいなんだろ、お母さんのことよろしくね〜と答えてくれました。
ただ、私がなったということは弟にもその可能性があるわけで。母も一応調べておいて損はないと思ったので、二人には、心配だから遺伝子検査を受けてもらえないか、と頼みました。結果、二人は陰性でした。
そして、私がなったということは娘にもその可能性があるわけです。だから、娘にはすでに伝えているんです。突然、大人になってから言われたら、めちゃくちゃショックだと思うんですよ。とくに思春期のときだったら受け入れ難いと思うんです。だったら、お母さんにずっと小さいときから言われていたな〜、耳にタコができるくらいだったな〜くらい日常的な感じになればと思って、ことあるごとに、今日ママ検査受けてきたけど大丈夫だった、あなたもその可能性があるからさ、と話していました。そうすると、どうしようって言ってくるんですけど、大丈夫、ママが全部資料をファイリングして、全部わかりやすくまとめてるし、助けてくれる先生もまわりにいるから、と、あまり怖がらせないように伝えています」
仕事に対する気持ちの変化

料理家、経営者、そして東京農業大学の学生さんとしてもアクティブに過ごしている栗原さんですが、乳がん、そしてHBOCがわかる前と今では気持ちの変化はありましたか。
栗原さん「もっと濃厚な人生を生きないといけないと思っています。せっかく早期発見して寛解までいけたんだから、やりたいなと思ったことは片っ端からやってみようと思って。それで、料理でずっと疑問に思っていたことをクリアにするために、大学受験をして、大学に通うようになりました。
そして今、乳がんの患者さんやいろんな女性のために下着を作ろうかなと思って、新しい会社を作ろうと思っています。自分ががんにかかって抗がん剤治療で髪の毛がなくなったときに、どうやって過ごせばいいか誰も教えてくれなかったし、化粧品は友だちが教えてくれることもあったけど探さなければいけなかったし。病気になって必要になるものが一気にわかるポータルサイトみたいなものができればと思っています。
みなさんへのメッセージ
最後に、みなさんへひと言、メッセージをいただければと思います。
栗原さん「遺伝子検査は『検査』というだけでものすごくハードルが上がっちゃうし、お金も心配になるかもしれないけど、自分がこの先どういう人生を歩んでいくかを最優先に考えたら、絶対に検査はしたほうが良くて。遺伝子検査は自分のライフプランをすごい先まで立てられるようになるから、ぜひ受けていただきたい。今は保険適用になっているので、ちょっとお酒やちょっと趣味を我慢すれば貯められない金額ではなくなっているので。
病院にも聞きづらいかもしれないけど、遺伝子検査やってますかと遠慮なく聞いて、積極的に受けていただけたら、皆さんの人生がどんどん濃いものになっていくと思うので、受けていただけると嬉しいです」
オリジナルレシピ料理実演
料理実演の模様はこちら
[再生時間:23分46秒]
乳がん体験を語るトークショー
乳がん体験談の模様はこちら
[再生時間:20分17秒]