がんは遺伝なの?
がんの発症と遺伝子の変化
遺伝子は、私たちの体をつくるさまざまなタンパク質の設計図に相当します。ヒトの場合、約2万種類の遺伝子を持っているといわれており、遺伝子ごとにさまざまな機能があります。
がんは、遺伝子の変化*により引き起こされます。変化は頻繁に起こりますが、ほとんどの場合は自動的に修復されるため、がんを引き起こすことはありません。
しかし、ときには修復されずに新しい細胞にも受け継がれることがあります。この変化が、細胞増殖やDNA**修復の制御などの重要な機能を妨げてしまう有害なものであった場合、蓄積するとがん細胞の発生につながります。
*遺伝子の変化:遺伝子の変化のうち、後天的な変化は「遺伝子変異」と呼ばれることもあります。
**DNA:細胞の核の中にあり、4種類の塩基(A:アデニン、G:グアニン、C:シトシン、T:チミン)が長く連なってできています。この塩基の並びが遺伝子の情報(遺伝情報)を構成しています。
遺伝子に変化が起こる要因
遺伝子が変化する要因として、 「生活習慣などの環境」 と「生まれ持った体質」が挙げられます。
環境要因には、放射線や特定の化学物質、紫外線や喫煙などがあります。加齢によっても変化が起こりやすくなります。
また、生まれ持った遺伝子の変化は、両親のどちらか、あるいは両方が持つ変化を受け継ぐことで生じます。生殖細胞(卵子、精子)の遺伝子にも変化が存在するため、さらに子どもへ受け継がれる可能性もあります。
遺伝性のがんとは
ほとんどのがんでは、遺伝子の変化ががん細胞だけに生じるため、子どもに受け継がれることはありません。
一方、全身の細胞に含まれる遺伝子に生まれつき変化があり、その変化ががんと強く関連していることがあります。この「病的バリアント*」を受け継いで、明らかにがんに罹患しやすくなっている体質のことを「遺伝性のがん」と総称しています。
遺伝子は父親と母親から1つずつ受け継ぐため、2つ1組として存在しています。2つの遺伝子両方に変化が起こることで、がんは発症します。ところが、遺伝性のがんの患者さんは、生まれつき1つが変化していることが多いため、一般の人に比べてがんを発症する確率が高くなります。
*病的バリアント:遺伝子の変化がみられることをバリアントといい、がんとの関連が強い変化である場合に「病的バリアント」といいます。